「つゆにしっかり絡めて食べるのが基本。食べ終わったときに、つゆも一緒になくなっているのが、伊勢うどんの正しい食べ方とされています。」という説明が、「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE」という記事に掲載され、またもやSNS上で反発。今回は炎上とまではいかないが、反発の声が上がっているという「まいどなニュース」での記事。「伊勢うどんに「正しい食べ方」なんて無いわ。よく混ぜると美味しいよと言えばいいだけなのに、どうしてこういうマナーを新たに創造しちゃうの。」と、ある料理作家の発言を紹介。

確かに料理の食べ方は人の自由で、自分の好みの食べ方で食べればよいでしょう。といっても、最低限のマナーもあります。例えば、うどんをフォークで食べるとかは、どうなんでしょう。それにしたって、スパゲティを箸で食べる人もいますから、何とも言えないか。よく言われるのが、蕎麦を食べる時の「ズルズル」。外国の方にはかなり評判悪いようですが、蕎麦を「ズルズル」と食べないでどうしようっていうんだ、と江戸っ子が反発します。
そういえば「タンポポ」という映画の1シーン。レストランで食事マナーの講師がスパゲティの食べ方の講習をしています。その女性講師、上品にフォークに麺をからめ、口に運び、音を立てないようにゆっくり噛んでいます。なるほど上品。ところが、まわりから「ズルズル」という小さな音が聞こえ、それにつられて店内のお客や講習を受けていた生徒たちまで、スパゲティを「ズルズル」と食べ始めます。女性講師、最初は我慢していたのですが、たまらず自分も「ズルズル」と。上品さもどこかへ消え、貪るように食べ始め、その美味しそうなこと。
音を立てて食べるのと「食べ終わったときに、つゆもなくなっている。」とは別の問題ですが、要は美味しく食べられれば、それでいいのではないでしょうか。
以前、某観光地の有名なお蕎麦屋さんに入った時のこと。季節は秋、冬に近い秋。ずいぶん順番待ちしました。30分ぐらいしてやっとお店に入ることができ、席に案内され、寒かったので温かい蕎麦を注文。楽しみに待ちます。有名なお蕎麦屋さん、店の前にはズラッと行列。どんなお蕎麦なんだろうと、期待に胸が膨らみます。ところが、カウンターで調理している、ちょっと年配の店主らしき人が、「当店の蕎麦は、冷やして食べるほうが美味しいです」とやり出しちゃった。別にこちらに向かって言っているのではなく、自分のお店の蕎麦の特徴を、店内に響き渡るように説明している感じなんですが、どうしよう。今さら注文替えるわけににもいかないし、替える気もないし、寒いし。店内は暖かかいけど、外に出れば寒いから、やっぱり温かいお蕎麦食べたい。冷やし蕎麦食べろというのなら、何故メニューに温かい蕎麦があるんだろう。と文句も言いたいけど、お蕎麦屋さんですから、それなりに温かい蕎麦もないといけない。
やはり有名店には、有名店の自負があり、主張すべきものをもっていれば、主張したい。きっとそうなんでしょう。伊勢うどんの件も、伊勢うどんの魅力を伝えようとして、一生懸命なんす。そのことに反発する人も、食べる側の立場としての気持ちを伝えなくてはいけない。この小さな距離を縮めるにはどうしたらいいのか。
結局そのお店では温かい蕎麦をいただきましたけど、味は微妙。味覚は、その時の環境に左右されると誰かが言ってました。
これが立ち食いソバ屋さんとなると、そうもいかない。「汁は全部飲んでください」とか「ネギは控えめに」とか「音を立てて食べないでください」とか、そんな風にやられたら客足半減で死活問題です。せいぜい、食べ終わったら器はカウンターまで、ぐらいです。安いんだからしょうがない。安くても美味しいし、素早く「ズルズル」。何の問題もないです。

何年かたって、再びそのお蕎麦屋さんに行ってみました。相変わらず順番待ち。しばらく待って中に案内され席に着きました。以前と何も変わっていない。今度は冷やし蕎麦を注文。夏でしたから、暑かったから。でも周りで、温かい蕎麦を食べている人もいます。その日の店主は静かでした。ボーっとしながら調理場のほうを見ていると、大きな鍋から湯気が立ち上っています。何となく思ったのが、あの時温かいつゆが足りなくなっていたのかもしれない、という勝手な思い込み。それで焦って、店主が冷やし蕎麦を勧めていたのかもしれない。もしそうなら、あの時の店主大変だったろうな。と、これまでいやなイメージが残っていた店主の印象も、その日は、ひとつひとつの仕草が穏やかに見え、いいお爺さんだなと、しみじみ眺めてしまった。本当に温かいつゆが足りなかったかどうかは別にして、人間の印象は、ちょっとしたことで変わるもの。こんなこと、世の中にたくさんあるんだろうなと考えてしまう、今日この頃です。
By 料理パパ3号
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